#11 看護師さんの疲労の正体!

看護師さんはシフト勤務で働いている人が多く、深夜帯に働かなければならないということや、その仕事内容自体が緊張を強いられる場面も多い上、肉体的にも重労働でもありますので、心身共にかなりストレスフルです。

このストレスが長期化することで、じわじわと疲労が蓄積していくのですが、この「看護師特有の疲労」を、ちょっとした疲れと考えていると事態はどんどん悪化して行きます。

看護師はその仕事の特性上、深刻な疲労状態に陥りやすいのです。
少し怖い言い方ですが、長い人生、今をとにかくしのごうと考えていると、元気な老後が送れない可能性もあります。
自身の疲れの正体を理解して、対策を考えて行きましょう。

この動画の内容は、現在日本でトップクラスに分子栄養医学に取り組まれている医師の元で学んだことをベースに、私の経験や解釈を加えています。

本文を最後までお読みいただければ、ご自身の疲労の原因が明確になり、その解決の第一歩を踏み出すことができます。

① 看護師さんの疲労の正体、それは『副腎疲労』です。

正確には視床下部(Hypothalamus)〜脳下垂体(Pituitary gland)〜副腎(Adrenal cortex)の順で命令系統が動き分泌される「コルチゾール」の合成が、うまくいかなくなること。

それぞれの頭文字をとって「HPA軸の変調」が正確なところなのですが、米国からこの考え方が輸入されてきた時にアドレナル・ファティーグ(Adrenal Fatigue)、副腎疲労と呼ばれていたことから、この名前が広く知られています。

今回は一般的な呼び名である「副腎疲労」という呼び名をメインに使用して、詳細の理解が必要な部分ではHPA軸も解説していきますね。

さて看護師がなぜ、副腎疲労を生じやすいのかと言いますと、まずは『#10 看護師をバーンアウトする前にみて!』でもお話しているのですが、なんと言っても深夜勤務がその大きな要因です。

コルチゾールは本来、朝の8時頃に分泌量のピークを迎え、午後に向けて分泌量が減っていき、夜にはほとんど出なくなるのが正常です。

健康な人の場合、これを毎日規則的に繰り返しています。

看護師さんは、本来コルチゾールを出す必要のない、副腎がお休みする時間帯に起きて働いているわけですから、徐々にこのリズムが狂ってしまうのです。

深夜帯に働くということは内分泌系を狂わせてしまうリスクが高いということなのです。

そしてそれは、心身のあらゆるところに影響を及ぼしていきます。
どんな影響があるのかは、コルチゾールの役割を理解していただくとわかってきます。

② あなたは副腎疲労?チェックしてみましょう。 

コルチゾールというのは、別名「抗ストレスホルモン」と呼ばれています。
その役割は体内の色々な臓器に作用して、血糖値の維持、抗炎症、免疫抑制などを行う、生命維持に欠かせない重要なホルモンです。


このコルチゾールをうまく出せなくなってしまうと、慢性的な疲労感や、様々な不調が心と体に現れてきます。

では副腎疲労が疑われる症状があるか、チェックしてみましょう。

《チェックA》

□私はすごく元気だ。
□風邪も滅多にひかない。
□根拠のない自信に満ち溢れている。
□多趣味だ。
□休日の予定はびっしりだ。
□静かにゆっくり過ごすのが苦手。
□常に何かしなければと思ってしまう。(じっとしていられない)
□SNS中毒だと思う。
□声が大きい。
□早口だ。
□歩くのが速い。
□早食いだ。
□周囲の環境によく体をぶつける。
□なんだか太ってきたし、痩せにくい。

《チェックB》

□朝起きるのが辛い
□熟睡できない、途中で目が覚める(尿意を感じて起きているものも含む)
□甘いものが好き。
□しょっぱいものも好き。
□いや、むしろしょっぱいものの方が好き。
□エネルギーの低下を感じる。冷え、倦怠感など。
□今までできていた日常的なことができない。やろうとすると一苦労する。
□性欲がない。
□ストレスへの対処がうまくいかない。イライラしやすかったり、落ち込みやすい。人に八つ当たりすることもある。
□飲酒量が増えた。喫煙している。
□風邪などの呼吸器感染症や怪我からの回復が遅い。
□立ちくらみがある。
□落ち込みやすい、鬱っぽい気がする。
□ショックなことがあると立ち直るのに時間がかかる。
□楽しいことがない。興味を持てるものがない。
□PMSがひどい、もしくは悪化している。
□コーヒーやコーラなどのカフェインの入った飲み物やチョコレートなどを口にしないとやる気が出ない。
□集中力が低下している。長い文章が読めない。
□物忘れが多い。その日に食べたものが思い出せないなど、記憶力の低下を自覚している。
□空腹になると途端にぐったりしてしまう。
□便秘や下痢、もしくは両方を繰り返す。
□お腹が張りやすい。
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シフト勤務以外の方
□15時〜16時の間に倦怠感やぼんやりした感覚が出ることがある。
□夕食後になると元気になって活動が活発になる。
□寝るのは勿体無いと思う。

チェックAは副腎疲労の「抵抗期」、Bは「疲弊期」を読み取る項目です。
特にチェックBは、1つでもチェックがつくと副腎疲労を疑ってよいと言われています。

抵抗期は1日中コルチゾールが出っ放しの状態です。
月に数回深夜勤務がある看護師さんは、まずはこの抵抗期状態に移行しやすいのです。
そしてこの抵抗期を経ていずれ疲弊期へと移行していきます。

看護師さんのバーンアウトはこの副腎疲労「疲弊期」にあたるのではないかと考えています。

抵抗期にいる時にはすでに副腎疲労が始まっているのですが、本人の自覚としては元気で充実しているので、まず私のような栄養セラピストに頼るような状況にはなりません。
本当はこの段階で適切な栄養と休養が得られると良いのですが・・・。

この状況が永遠に続けば良いのですが、抵抗期に耐えられる期間には個人差があって、数ヶ月〜数十年の開きがあります。

なので、「同じことをしているのに、あの人は元気なのに自分はなぜこうなの?」と考えても無駄なことなのです。

③副腎疲労になりやすい性格。

副腎疲労にはなりやすい性格というものがあるのですが、看護師に向いている性質というのが、まさにそのドストライクをいくものなのです。

副腎疲労になりやすい人の性格とはどういったものなのでしょうか?

○勤勉で責任感が強い。
○ルールを厳守する。
○遅刻をしない。
○親切である。
○自分より他人を優先する傾向がある。
○「頑張ります」「〜べき」「〜ねばならない」という言葉をよく使う。
○感謝しているのに、「ありがとう」ではなく、「すみません」を使いがち。
○自分がやった方が早い(気が楽)と思いがちで、人に依頼することが苦手。
○他人のことが許せない(ジャッジしがち)。

ここまで読んできて、これって看護師の特性ではなく、日本人の特性じゃないの?と思った方、鋭いです!
そう、日本人はとても副腎疲労になりやすい傾向を持った民族なのです。
今では子供でも副腎疲労の治療を受けていたりします。

アメリカでも80%の人が副腎疲労に罹患していると考えられています。
日本でも、我が身に全く関係のない芸能人の不祥事が、あれほど話題になるところを見るに、多くの日本人は相当の副腎疲労なのではないかと思うのです。

日本人的な考え方がベースにあり、深夜帯に働く看護師さんは、副腎疲労のリスクが高いと言えます。

④ コルチゾールが出なくなるとどうなるの? 

では副腎疲労の疲弊期隣、うまくコルチゾールが出せなくなるとどうなるのでしょうか?

コルチゾールによって維持されてきた血圧や血糖値などが維持できなくなります。
低血糖を起こしやすくなりますし、そうすると体はアドレナリンを使って代償します。
しかし、アドレナリンを使って対処すると、心や体にアドレナリンによる望ましくない作用が起こります。

肉体的には、動悸や息切れ、目眩、抹消血管が締まるので末端に冷えを感じやすくなります。
手のひらが汗で濡れているタイプはアドレナリンエンジンで生きている可能性があります。
日中に低血糖を起こしアドレナリンを使っていると、夜間の眠りの質が悪くなりますし、体蛋白の異化が亢進して筋肉や胃腸の粘膜が脆弱になります。

精神的には、不安を感じやすくなったり、イライラしやすくなったり。
嬉しいことにも悲しいことにも反応が大きく、感情の起伏が激しい状態になります。

それらが先にチェックしていただいた項目Bの状態です。
この状態には数十年かけて移行していく場合が多いので、自分のデフォルトだと思いがちです。
「疲れやすい」「部屋が片付かない」「情緒が不安定」「甘いものがやめられない」などといった状態が、副腎疲労からもたらされているなどとは考えもしません。

そしてそもそも副腎疲労気質ですから、自分は甘えている、だらしない、もっと体力をつけて頑張らなければ!片付けなければ!人にイライラするべきではない!そんな自分はダメだ!となって、益々副腎疲労を悪化させていくのです。

副腎疲労は重症化すると、副腎のナトリウム貯蔵能が低下するため、塩分を欲する様になります。

疲れた時はチョコレートよりポテチやせんべいという方は、副腎疲労が結構進行している可能性があります。

誰しも疲弊期の前には抵抗期があります。
副腎の働きは想像以上に私たちの人生と密接しています。
あの頃は絶好調だったな〜、若かったなぁ〜、などと感じている一面が副腎疲労抵抗期であり、現状は疲弊期なのかもしれません。

⑤ 看護師だから陥る副腎疲労。 

同じ副腎疲労の状態でも、生活リズムの問題で一時的に乱れているだけのものと、「脳疲労」が伴う重症なものがあります。

実は看護師という職業は脳疲労が伴う副腎疲労になりやすいのです。
こちらは回復までに時間を要する重症なものです。

最初にお話ししたHPA軸ですが、もう少し詳しくお話すると、視床下部が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌し、次に脳下垂体が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌し、副腎がコルチゾールを分泌するラインのことです。

心理的な抑圧や度を超えたストレスがかかると、視床下部にダメージが与えられ、その働きが抑制されてしまうのです。するとそこから、ホルモンの微妙な分泌調整が行えなくなってしまいます。

看護師さんはインシデントを起こさないように手順に沿った確認行動を義務とされながらも、対人サービス業の面もあり、患者様のご要望をできるだけ速やかに満たすこともしなければなりません。
それでいて、医師の処置を介助するというプレッシャーがかかる場面も多くあります。

そこに同僚や先輩ナースなどの人間関係も絡んで、視床下部は長期的なストレス状態に晒されているのです。

看護師さんは副腎疲労が重症化しやすいのです。

⑥ 精神的ストレスだけではない、副腎疲労の原因。

実は副腎疲労を起こす要因はこれまでお話ししてきたものだけではありません。

化学薬品、食品添加物、水銀などの重金属などの毒素を日常的に取り込むことも肉体的ストレスとなり、副腎疲労の要因となります。

食品添加物や水銀などは日本人すべてが曝露されているものですが、看護師さんは職業柄化学薬品に触れる機会が多いことや、一般人より薬剤が手に入りやすく(目の前に医師がいるので処方のハードルが低い)、軽微な症状でも薬品を服用しがちです。

現在は看護師もガウンやゴーグルで化学薬品からの曝露を防ぐ指導が一般的になってきましたが、施設によってはその意識が低い場合もあります。

まずは素手で化学薬品を扱わないことや、軽い頭痛程度で内服するような習慣があるとしたら、毎日寝る前にストレッチをするなど薬品に頼る前にできる努力をしてみることも必要です。

⑦ どうやら私は副腎疲労、どうすりゃいい?

副腎疲労チェックのA、Bに心当たりがある方はどうすれば良いのでしょうか?

抵抗期、疲弊期それぞれに意識して頂きたいこと、やることは違います。
両方に共通する基本的なところは『#10看護師をバーンアウトする前にみて!』をご覧ください。

まず、チェックAの抵抗期に多く当てはまった方は、『アドレナリンエンジンで生きている自覚を持つ』ことです。

その行動がアドレナリン欲しさにしているものでないかということ。

アドレナリンエンジンの人は、休みの日に家にいると気持ちが落ちる、頭が痛い、体がだるいということがあります。
これは刺激のない環境ではアドレナリンが分泌しにくいことが原因です。

こういったタイプの方はアドレナリン欲しさに、外に出かける、人に会う、多趣味といった、活発な行動になりやすいのです。

ちょっとしたことでイライラしたり怒ったりしやすいのも、アドレナリン欲しさに選んでいる感情かもしれません。これは本人も辛いですよね。

アドレナリンは副腎髄質から分泌されます。
コルチゾールが枯渇したからお次はアドレナリンで対処、などとしていると、副腎の疲労がどんどん増強して行きます。

おうちで一人の時間を静かにゆっくり過ごす、これができる人になりましょう。

仕事の後は疲労が強くてシャワーで済ませている人なら、休日はゆっくり湯船に入って、湯上がりに好きな香りのボディクリームで足をマッサージしてあげましょう。

チェックB疲弊期に多く当てはまった人は、結構重症だと思ってください。
夜勤をやめる、できないなら回数を減らす。という判断も大袈裟ではありません。

メンタル障害などで休職した看護師の復帰先が外来であることが多いのも、夜勤が与える影響を知っているからでしょう。

夜勤をやめたら給料が減ってしまう・・・。
産後でもなければ夜勤免除がない・・・。

そうですよね。
すごくよくわかります。
私も若いうちは夜勤の方が好きでした。

平日休み最高。看護師の良さはそこだよねと。

夜勤明けに一睡もせず遊びに行ったものです。
(体の悲鳴は聞こえなかった)

その夜勤手当が(その職場が)内分泌系を撹乱してまで大事にするものなのか。
疲弊期が疑われる段階まできているのでしたら、よく考えてみる価値はあるでしょう。

看護師さんは、今元気なら『副腎疲労抵抗期』だと思っていいくらいだと思います。

どうか、自分を休ませる意識を持ってください。
患者様にそうする様に、自分のために安全で安楽な環境を準備しましょう。
そうすることで元気に働ける看護師寿命が伸びます。

辛いなら、まず夜勤をやめる勇気を。

収入が減るから考えられない。わかります。
でも夜勤をやめてみると、お金と引き換えにならなかったとわかります。

それどころか、常日勤に移行すると、視野が広がり勉強する余裕も出てきて、次の展開に繋がって行きます。

私は17年間病棟看護師をしていました。
夜勤の無い環境で働きたかったのですが、小さな子供がいる訳でもなく希望が通るとは思えませんでしたので、手術室を希望しました。

当時勤務していた病院の手術室は月に数回「待機」があって、オーバーナイトの手術もよくありましたが、待機でなければ日勤ですから随分体が楽になりました。

病棟から手術室に異動して、今の道に繋がる勉強を始めました。
病棟時代は夜勤明けなどたくさん時間がありましたが、アドレナリン欲しさに自然の岩場にクライミングに行ったり、買い物や雑貨屋、カフェ巡りとかしちゃって勉強なんかする時間(気力)はありませんでした。

① まとめ。

看護師さんの疲労は「副腎疲労」です。
この疲労は初期段階ではむしろ元気に見えるので曲者です。

コルチゾールがうまく出せなくなって、アドレナリンエンジンで生きていくようになると、疲労(消耗)とメンタルの不具合が加速されていきます。

自分の状況を把握して、適切な対応をしましょう。

『ゆっくり過ごすのが苦手、リラックスができない。』

これはすでに副腎疲労が始まっているサイン。
「元気」と誤解せずに、心と体を休ませましょう。

すでにはっきりと辛さを自覚している様であれば、勇気を出して働き方を変えていきましょう。

夜勤をして稼いでも、ストレスで使ってしまっているケースも少なくありません。

常日勤に変更したら収入は減ったけど、自炊ができる様になったり爆買いしなくなってかえってお金が貯まって来たという人もいます。

渦中にいる時は選択肢が見えないものです。
これを機に自分と会議をしてみてください。

適切な休息と栄養が補給できれば、決断のハードルも下がります。

決断する前に体を整えることも大事です。

良い体調と明晰な思考で次のステージに移行していきましょう。
栄養セラピーではそのお手伝いができます。